南スマトラ地区 列車カタログ

1.旅客列車

1.1 特急列車(クラスエグゼクティヴ・ビジネス) Sriwijaya/Sindang Marga号

 南スマトラ地区旅客輸送の花形列車で、エグゼクティヴ(K1)とビジネス(K2)クラスのみで組成された特急列車。パレンバンのクルタパティ駅から北幹線ルブックリンガウ駅までと、南幹線タンジュンカラン駅までの2往復が運行されている。ルブックリンガウ行きは「Sindang Marga(シンダン・マルガ)号」、タンジュンカラン行きは「Sriwijaya(スリウィジャヤ)号」という名前である。以前は、クルタパティ〜タンジュンカラン間に、昼間の特急列車「Fajar(ファジャール)号」も運転されていたが、南幹線では石炭列車の増発に次ぐ増発でスジに余裕がないこと、貨物列車過密ダイヤで遅延が慢性化し、折り返し時間までに終着駅に到着しないなどの理由により、2006年に廃止されてしまった。両列車とも夜に出発し、早朝に到着する夜行ダイヤとなっている。そのため、走行シーンを撮影するのは難しいが、前述のとおり遅延が慢性化しているため、終着駅付近では遅れて走ってきた列車を早朝に撮影することも可能かもしれないが保証はない。


パレンバン市内のクルタパティ駅に到着した「スリウィジャヤ号」
ダイヤでは5:55着であるが、実際は7:30着で約1時間半遅れ
2007年11月28日7:43 KertaPati駅

1.2 急行列車(クラスエコノミー) Rajabasa号/Serelo号

 南スマトラ地区では最も一般的で大衆向けの列車。エコノミー(K3)クラスのみの組成であるが、唯一の昼間の長距離列車とあって、いつも混雑している。パレンバンから北幹線のルブックリンガウ駅までと、南幹線のタンジュンカラン駅までの2往復が運行されているのは特急列車と同じである。タンジュンカラン行きは「Rajabasa(ラジャバサ)号」、ルブックリンガウ行きは「Serelo(セレロ)号」という名前である。これらは共に付近にある有名な山の名前である。インドネシアには種別という概念があまりないが、日本でいうところの「急行」に該当する列車である。時刻表上は主要駅にしか止まらないスジであるが、貨物列車過密ダイヤで交換待ちが多く、ほとんど各駅停車状態である。また、車掌・運転手に行き先の駅を告げれば大抵止まってくれる。また、ド田舎の駅でも客がいれば駅員が運転手と無線連絡を行い、停車する。そのため列車の遅延は日常茶飯事で、終点近くでは3時間以上遅れる事も珍しくない。


南幹線のRajabasa号 2007年頃までは機関車とお揃いの赤青塗装であった。
ダイヤでは14:16到着で、実際も14:16到着と、奇跡の定時運行。
2007年6月6日14:16 NegeriAgung駅にて


こちらは北幹線のSerelo号。同じく赤青塗装の編成美。機関車汚いね。
ダイヤでは11:00頃通過、実際は10:59通過でこちらも奇跡の定時運行。
2008年3月6日10:59 SaungNaga←TebingTinggiにて


2008年頃のRajabasa号。客車の色が黄青塗装に変わっている。
ダイヤでは12:20頃通過、実際は12:09で若干フライング気味。
2008年5月3日12:09 TulungBuyut→NegeriAgungにて


2010年頃のSerelo号。同じく客車は黄青塗装に。その名のとおりSerelo山をバックに行く。
ダイヤでは13:42通過で、実際は14:38。1時間近い遅れ。
2010年5月3日14:38 SukaCinta駅にて


1.3 普通列車(タンジュンカラン〜コタブミ)

 ランプン州では、州内の鉄道がほとんどブキットアサム社からの石炭輸送のみに使用されていることに強い難色を示していた。(実際に前述のとおり昼間の特急列車は石炭列車の増発により廃止されてしまっている) そこで、ランプン州とインドネシア鉄道(以下PTKA)では鉄道旅客需要を喚起する目的もあり2007年よりタンジュンカラン〜コタブミ間に2往復の旅客列車を運行することになった。当初は客車1〜2両程度で運転されていたが、程なくジャワからの中古気動車が導入された。現在では新型気動車が導入された模様であるが詳細は不明である。しかし、タンジュンカラン〜コタブミ間は国道から離れた田園地帯を突き進み、駅周辺にも大した町がないためいつもガラ空きであった。PTKAでは今後旅客需要を掘り起こすことが出来るかが重要になっている。


2007年初めに見た時には、客レだった。
ダイヤでは13:30、実際は14:50で1時間20分遅れ
2007年6月5日14:50 Bekri駅


コタブミ駅に停車中のタンジュンカラン行き気動車。
この列車、コタブミ8:19着の筈なのに、8:11には既に到着してました。
2007年12月5日8:11 Kotabumi駅


タンジュンカランに到着した列車。
ダイヤでは11:29着なのに、11:05には到着。この列車は早着癖があるのね。
2007年12月5日11:05 TanjungKarang駅



1.4 普通列車(クルタパティ〜インドララヤ)

 パレンバン市郊外のインドララヤ郡にスリウィジャヤ大学があり、ここの大学生向けに新たに新線を建設し、1日2往復の通学列車が設定されることになった。日本でも学校新設のため新駅ができることはあるが、新線まで作ってしまうところはさすがインドネシアである。しかも新線まで作っておいて1日2往復しか来ないというのはいかがなものか・・・。インドネシアの交通運賃は極めて安く(50円程度)、1日数百人の学生のために新線作って車両導入して運行してもモトが取れるはずがありません。早々に廃止にならないことを祈りましょう。


昼間はインドララヤ駅でヒルネをしているディーゼルカー。
2009年12月29日10:43 Indralaya駅

2.貨物列車

2.1 石炭列車(ババランジャン:タンジュンエニムバル〜タラハン)

 南スマトラ地区鉄道の最大の存在理由となっている、タンジュンエニム炭鉱からのブキットアサム社の石炭輸送。終着タラハンでは、国営タラハン火力発電所と、海を渡ってジャワ島向けの輸送が行われている。まさにインドネシアのエネルギー輸送の中核を担っている。
 この列車は1986年のブキットアサム社の輸送力増強、設備近代化政策により誕生し、今日にいたっている。専用のCC202型重連で石炭車を40両程度牽引する形態が長く続いたが、2010年よりCC202型3重連+石炭車60両程度という更に長編成のものが現れた。これは、交換設備の不足等により列車増発が限界に達しており、手っ取り早く輸送量を増大させるために長編成化に踏み切ったものと思われる。今後は更に複線化や交換設備の新設、勾配曲線の緩和等の改良工事を行い更なる輸送力の増強が行われる予定である。
 このタラハン向け石炭列車は他に比べ長大編成であるため、Babaranjang(Batubara Rangkaian Panjan:石炭・編成・長い:長編成石炭列車)と呼ばれ、他の石炭列車とは区別されている。
 2006年ダイヤでは11往復、2008年では14往復、2010年ダイヤでは15往復と年々増発されており、今後も設備改良とももに増発が続くものと思われる。
 使用される車両は、このババランジャン専用の機関車CC202型と、専用の石炭車。タラハン港では、カーダンパーを使用した荷役を行うため、他形式は使用されず専用の貨車を使用する。
 これら専用の車両を使用し、長大編成で南スマトラの大地を颯爽と走る姿はとても美しく逞しい。


同方向重連で45両編成を牽引。うーんかっこいい!
2010年1月1日13:42 Belatung←BlimbingAirKakahにて


カマアップで狙ってみました。基本は背中合わせ重連です。かっこいい!
2008年2月16日12:50 TigaGajah→Belatungにて


長大編成同士の交換! シビレるっ!!
2008年2月6日17:32 NegeriAgung駅


2010年より、3重連が登場しました。もうカッコよすぎっ!!
2010年5月4日10:25 TanjungRambang→PbrX5(信)にて

2.2 石炭列車(タンジュンエニムバル〜クルタパティ)

 クルタパティ行きの石炭列車は歴史の古い石炭列車で、タラハン港が開港する前からジャワ島向けや輸出向けの輸送が行われてきた。現在はジャワ島向け輸送はタラハン港に明け渡し、輸出向けとインドララヤにあるクラマサン火力発電所向けの輸送が行われている。
 クルタパティ向けの石炭列車は全国汎用機であるCC201型の単機または重連で、単機の場合は18両、重連の場合は36両の石炭車を牽引する。その時の機関車の状態や運用状況、石炭の出炭状況により重連か単機かが決まるため、いつ重連が来るかは分からない。
 貨車は昔からの払出扉の付いた、日本では「セキ」に該当する貨車が使用される。また、時にはセメント車の用途変更車も混じることがあるが、荷役方法が同じであるため特に問題はない。クルタパティでは高架桟橋からの荷役が行われる。
 2008年頃からは、石炭輸送を廃止したパダン地区から石炭車が転入したが、この貨車は今のところ同一形式でのみ編成を組んで使用されている。
 クルタパティ向け石炭列車の運行本数は、タラハン向けとは比較にならないが、それでも2008年段階で6往復、2010年段階で8往復運行されており、タンジュンエニムバルから発車する石炭列車の1/3はクルタパティ行きである。ただ、石炭車がタラハン向けよりも小さく編成も短いため、輸送量では1/5程度に留まっている。
 タンジュンエニム炭鉱では、積込線はループ状になっているが、終点クルタパティの払出線は櫛状であるため、1往復すると必ず列車の向きがひっくり返るという特徴があり、そのため機関車も前位側を前にして来たり後位側を前にして来たり、常に向きが変わる。ちなみにタラハン駅は払出線もループ状のため、常に前位側を前にして走っている。


流線形を先頭に重連! すごいセンスね。機関車次位は元セメント車です。
2007年11月27日9:32 Payakabung駅にて


ノーマル機の同方向重連です。いちばんマトモかな。
2008年3月28日10:23 Penanggiran駅にて


こいつは単機列車。後位側が前で来ると、非常に前が見にくそうです。
2008年5月5日12:12 Payakabung駅にて 


西スマトラ・パダン地区から来た石炭車を牽引する流線形。
2010年1月2日12:26 UjanMas←MuaraGula


2.3 石炭列車(タンジュンエニムバル〜ティガガジャ)

 ティガガジャ行き石炭列車は、ティガガジャにあるバトゥラジャセメント社の工場への燃料輸送である。1日1本のみで、原則としてセメント用ホッパ車を石炭に用途変更した貨車を使用する。牽引はCC201型であるが、この運用では機関区に帰区出来ないため、1度この運用に入った機関車は暫くずっとこの列車ばかり牽くという特徴がある。


2007年頃は、セメントホッパ車と石炭車の混成でした。
2007年5月30日12:26 BlimbingAirKakah→LubukRukamにて


南幹線を行く返空回送。全車セメントホッパ車による編成。
2010年5月4日9:01 TanjungRambang→PbrX5(信)にて



終着TigaGajah(ティガガジャ)駅に到着した石炭列車。こちらもセメントホッパ車のみ。
2008年2月16日17:39 TigaGajah駅にて

2.3 パルプ列車(ニル〜タラハン)

 2000年に、Niru(ニル)駅付近にタンジュンエニムレスタリ社(PT.TanjungEnimLestari)のパルプ工場が操業を開始し、この工場より出荷されるパルプをタラハン港へ輸送するために新たに設定された列車である。そのため、運行開始も2000年よりとなっている。
 機関車はこの時新製されたCC203型があったっており、基本的に重連で牽引する。ただ、CC203型は4両配置4両使用のため、検査入場している場合にはCC201型重連が牽引するケースや、単機で貨車も半分の両数というケースもある。貨車はこのパルプ輸送用に新製された有蓋車を使用する。
 1日1往復の運行で、夜に運行されているが、下り返空のBaturaja(バトゥラジャ)以遠が朝の運行となっており撮影が可能。頻発運転している石炭列車のため影の薄い列車である。


2007年頃は、CC203型は白かった。
2007年8月9日9:19 Peninjawan駅にて


2007年末頃よりCC203型はPT.TEL専用塗装に変更された。
2009年12月29日13:11 TanjungRambang→PbrX5(信)にて



列車によっては単機&貨車半分でやってくる。
2008年5月4日8:29 TigaGajah→Belatungにて

2.5 セメント・石油列車

 南幹線では中間地点のTigaGajah駅から、KertaPati行きとPidada行きのセメント列車が運行されている。また、KertaPatiからTigaGajah行きの石油列車も運行されている。ダイヤ上はセメント列車と石油列車は区別されているが、日によってはセメント車と石油タンク車の混結でやってくる。
 南幹線のセメント列車は、セメントホッパ車・石炭車を使用したクリンカ・鉱石輸送及び、有蓋車・長物車・無蓋車を使用したセメント輸送、ホッパ車を使用した砕石輸送を同時に行っており、色々な貨車の混成で来ることが多い。しかし、列車によってはホッパ車のみで組成されている時もあるなど、編成のバラエティーが多い列車である。
 なお、ランプン方面のPidada(ピダダ)行きはあまり運行されておらず、遂に走行シーンを見ることはできなかった。また、2010年のダイヤ改正ではスジ自体が消滅してしまっている。ただ、ピダダ駅自体は廃止にはなっていない模様で、今後運行再開されるのかが気になるところである。
 逆にパレンバン方面KertaPati行きは2010年のダイヤ改正で1往復増発となっている。
 石油列車は前述のとおり単独で運行される時と、セメント輸送列車と混成で来る時があり、それぞれ輸送量に応じて編成が決まる感じなのでは?と思われる。
 尚、機関車は常にCC201型が使用される。


この時はワキ+トキ+ホキ&セキのセメント貨車オールキャスト。
カマはお馴染みのCC201-134
2010年1月3日10:39 PbrX5(信)にて


この時はトキ+ホキ+セキ。編成の大半が無蓋車トキ。
2008年5月2日9:57 Payakabung駅にて



この時はトキ+タキ。セメントと石油の混成であるがセメントはトキのみ。
機関車はまたもやCC201-134
2008年3月27日7:10 TigaGajah→Belatungにて


この列車もトキ+タキで、機関車も含めて上写真と全く同じ組成なのだが、なぜか
機関車の向きがひっくり返っている。牽引機はCC201-134
2008年1月9日9:09 TanjungRambang→PbrX5(信)にて


この時はセキ+トキ+ホキ+タキのセメント石油混成の長編成。
2008年2月15日7:25 TigaGajah→Belatungにて


この時はトキ+セキによる編成。機関車はまたもやCC201-134
2007年8月9日10:01 Peninjawan駅にて


この時は、1両のトキ以外は全て鉱石輸送のホキ&セキ。
2010年5月2日15:41 Belatung←BlimbingAirKakahにて


この時はホキ&セキの鉱石輸送車オンリーの組成。
2008年2月22日10:35 Payakabung駅にて


この時はワキ+トキの製品輸送と、タキによる石油輸送の併結。
2010年5月7日9:31 TanjungRambang駅にて


珍しく石油タキのみでやってきた。
2010年5月4日9:49 TanjungRambang→PbrX5(信)にて


こいつは数少ないピダダ行きのセメント列車。鉱石が山盛りで屋根から飛び出してます。
2008年1月9日12:36 Baturaja駅にて


バトゥラジャ駅で停車中のピダダ行き。こいつはトキ+ワキの製品輸送と後ろにホキによる
採石輸送の混成でした。走行シーンを撮れなかったのは残念。
2008年1月9日15:36 Baturaja駅にて


ピダダを出た鉱石列車。帰りにも荷を積んでいます。一体何を運んでいるのだろう?
2008年1月2日12:23 Pidada→TanjungKarangにて

2.6 セメント・石油列車(クルタパティ〜ラハト〜ルブックリンガウ)

 北幹線でも、クルタパティからルブックリンガウまでのセメント・石油列車が設定されている。スジでは一応石油列車と、混載貨物列車と別れているが、いつ見ても双方の列車にセメント車やタンク車、天然ゴム輸送用貨車が混成されている。北幹線の貨物列車は基本的に夜の設定のためお目にかけることは難しい。牽引はCC201型又はBB203型が使用される。


北幹線BanjarSari駅を通過中の貨物列車。
屋根付トキ+タキ+天然ゴム用チキに、全検入場のパルプワキ+セキが
繋がった混成編成。
2007年11月25日11:28 BanjarSari駅にて


Lahat駅で待機する2本の貨物列車。
2007年11月25日12:55 Lahat駅にて



北幹線北部を行く貨物列車。タキと、天然ゴム輸送用の枠付チキの混成。
2008年2月21日11:05 SaungNaga→TebingTinggiにて


TebingTinggi駅で小休止する貨物列車。基本的にタキのみであるが、
枕木輸送用のチキが増結されている。
2008年3月5日16:35 TebingTinggi駅にて


北幹線最西端付近を行く。タキのみの編成。
2008年3月6日 TebingTinggi→MuaraSalingにて


この時は屋根付トキ+無蓋トキ+ワキ+タキの混成。
2008年2月22日10:38 Payakabung駅にて


この時は屋根付トキ+タキの混成。
2008年5月2日10:29 Payakabung駅にて

3.その他列車

 以上の営業列車以外にも回送や試運転、試験列車、保守用車、保線工事車など様々な列車が設定されおり、スジに無い列車を見ることも珍しくない。特に保線用・保守用の車両は路線延長が500km以上あるためかなり頻繁に運転されている。ただでさえ貨物列車でスジが一杯なのに無理やりスジに割り込ませたり、駅間を2時間程度閉塞して保守・保線作業を行う時もあるため常にダイヤは乱れている。



いわゆるマルタイというやつです。こいつのせいでダイヤが乱れていました。
2007年8月9日16:40 Sepancar駅にて


保守用の線路点検車。こいつもしっかりと閉塞を使用するため、ダイヤをかき乱します。
2008年5月5日9:18 TanjungRambang←PbrX5(信)にて


北幹線ムアラエニム以西では使用されないはずのCC202型ですが、
ラハット工場への入場車を牽引してやってきました。
2008年2月28日12:02 BanjarSari→SukaCintaにて


こいつは軌道検測車と、ついでに入場する貨車を牽引してやってきた試験列車。
2007年5月31日12:48 BlimbingAirKakah→LubukRukamにて

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